君の名は。Another Side:Earthboundが凄いおすすめ!加納新太版と新海誠版の違いは?

新海誠監督の「君の名は。」
2016年10月17日時点 わずか2ヶ月で興行収入150億円を突破する大ヒット映画になりました。
私も映画を鑑賞して、とても感動して、その余韻に浸りたくなったため、さっそく小説も購入しようとすると・・・小説版「君の名は。」と名のつく本が2冊あるではありませんか??
角川文庫から出ている新海誠著作「小説 君の名は。」と、角川スニーカー文庫からでている 加納新太著(原作は新海誠)の「君の名は Another Side:Earthbound 」です。
かなり迷ったのですが・・私は、2冊とも購入して拝読したところ、どちらも少し特殊な小説だったので、「君の名は。」の小説版を未読の方にどちらを選んだほうが良いのかを解説したいと思います。
<h3>新海誠 著 小説 君の名は。(角川文庫)の感想</h3>
発売日2016年6月18日  値段(価格)605円(税込)

amazonレビューでも★5つが150以上のレビューがついていますが・・・内容自体は映画同様素晴らしいです。ただ、私自身は「小説」としては★3くらいが妥当だと思います。
とはいえ、これは私がこの本について勘違いしていたからかもしれません。
本を読み進めて、少し驚いたのは・・物語の進み方やセリフなどが・・映画とほぼ全く同じ内容なのです。
そうです。私の勘違いとは、小説バージョンは、映画バージョンと話の進み方が異なったり、映画に描かれていないストーリーや、登場人物の心情などが、映画よりも詳細に書かれているのだと「勝手な思い込み」をしていたのです。
なぜなら、私の今までの人生で、映画を観た後に同じタイトルの小説を購入した時は、小説が映画の「元ネタ」であったのです。
つまり小説版を元に、拡大したり、一部を切り取ったりして映像化されているのが映画という思い込みがあり、小説と映画が全く同じというのは、私にとてまったく予想外の出来事でした。そして最初の数ページ読んだだけで、映画と寸分違わない進み方、セリフに驚きました。そして「え?小説を読む意味ある??」と思ってしまった訳です。

しかーし、落ち着いて、よくよく考えてみたら当たり前の事だと気が付きました。映画の監督も小説の著者も、同じ新海誠さんな訳です。
新海誠さんは、そもそもアニメクリエーターであり、映画のストーリーを書くことはできても、小説家、文筆家ではありません。
この「小説 君の名は。」は、新海誠さんの頭の中に、きっちり映像化されており、それを前提に文字で表現されたもの・・・だと推察します。
要するに 「小説 君の名は。」よりも「脚本 君の名は。」のほうが、しっくりくる・・本なのです。

したがって、「小説 君の名は。」を読む場合の注意点は、「君の名は。」の映画を観て良かった→より深く味わいたいではなく、映画を何回も見に行く代わりに、文章を読んであのキレイな映像や感動的なシーンを思い返したい時に読むのをおすすめします。

ですから、「小説 君の名は。」を先に読んでから、映画を観るのは、映画と同じ内容を先に文章で読んでいくのと同じことですから、かなりネタバレ・・・というか、映画の醍醐味である、ハラハラ、ドキドキはかなりなくなってしまうと思いますので、読む順番は「映画の後で」を私は強くオススメします。

一方で、映画を観て良かった→ 「より深く情報を知りたい」という方。
つまり、映画になっていない裏話や、登場人物の思考など、映画とは異なる小説的な感動を「新たに」得たい方は、次で紹介する「君の名。Another Side:Earthbound」を読むことをオススメします。
<h3>君の名は。 Another Side:Earthbound  加納新太著の感想</h3>
(角川スニーカー文庫)  2016/7/30 値段(価格)670円(税込)

私の場合は映画を観てから、新海誠著の「小説版 君の名は。」を読んでう少し物足りなく感じたので、すぐにこの「君の名はAnother Side:Earthbound」を買って読みました。
結果・・私が体験したかったのは、小説版じゃなくて、こちらのAnother Side:Earthboundのほうの内容でした。
つまり、映画の中では描かれていないストーリーや登場人物のセリフなどが、この本には多く描かれていたからです。
<h4>加納新太(かのうあらた)さんって誰なんだ?</h4>
まず本が届いて思ったこと・・著者 加納新太さんって誰?でした。
調べてみると、ライトノベル作家とのことでした。
そしてブログや著作を拝見すると、「秒速5センチメートル」「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」など、新海誠さん原作の映画化になった小説がずらり。もうひとつの著作は「シャイニング・ティアーズ」というプレステ2用のゲームソフトのストーリーを保管するライトノベルの数々。
それだけで推察するのは失礼かもしれませんが・・・原作を映画化したり、ゲームのストーリーを考えるときに、メインのストーリーの裏付けとなる色々な設定が必要になる訳です。
メインストーリーに一貫性をもたせつつ、登場人物の関係やストーリー展開に深みを出すサブストーリーを考えるのは、非常に難しい事だと思いますが、そういう設定を考えたりされるのが、得意な方なのかな?と思いました。
新海誠監督の映像作品の3作品ともに加納新太さんが小説化を担当されている事から考えても、新海誠監督からの信頼は厚いのが見てとれますし、おそらくですが、新海誠監督がイメージ化するアイデアの元を、加納新太さんが文章で補完するような関係なのかな?と想像しました。
<h4>「君の名は。」を深く掘り下げた4話の短編小説。映画との違い。</h4>
全体のストーリーは新海誠バージョンに任せて、加納新太バージョンの「君の名は。」は、細かい設定を掘り下げた短編が4つ収録されています。

そして、特徴的なのは、三葉や立花瀧(たき)以外の登場人物の心理描写も多く描かれている事です。三葉の妹の四葉、そして勅使河原(テッシー)、そして三葉のお父さんである糸守町の町長である宮水俊樹(みやみずとしき)のが何を考えているのかが、メインストーリーを補完するサブストーリーとともに読者にわかります。
<h4>「君の名は。」映画と小説の大きな違い ~ニ葉(三葉の母)の描写~</h4>
この「君の名は Another Side:Earthbound 」と、映画本編、新海誠著「小説 君の名は。」が大きく異なる点は、三葉の母(二葉)が描かれている点です。
それは「宮水俊樹」に焦点があてられたサブストーリーで、俊樹が三葉の母・二葉と出会いを回想する。つまり俊樹側からみた二葉(ふたは)が描かれているのですが、この話で二葉(ふたは)が非常に魅力的に描かれているんですね。
そして、映画では二葉が亡くなった理由もわかりませんが、加納新太版「君の名は。」では亡くなった理由から、俊樹がなぜ神社を出て町長になろうとしたのか まで描かれています。
「二葉」の描写と、俊樹と宮水神社との関係性。この二つが映画には描かれていなくて小説に描かれている大きな違いになります。
<h4>加納新太版 「君の名は。」を読んでの感想~ネタバレ少しあり~</h4>
正直、私は映画「君の名は。」を観た後に、感動した反面「ちょっとストーリーに無理矢理感がある・・というか都合が良すぎないか?」という小さい疑念も持っておりました。(入り変わりする頻度が都合よく変わったり、もとに戻った後に記憶がなぜ薄れるかなど)
例えば、瀧(たき)が、宮水神社の女性は、一葉を含めて 夢を観る習性があるのに気がついたとき、すべては今日のためにあった~と映画の中で叫んでいたが、二葉を描いていないのになぜ、瀧はそこまで言えるのか?と思っておりました。
要するに、宮水神社の歴史的な事と、夢で他人と入れ替わることには大きな意味がある・・ということが、映画の中ではサラッと触れるだけなので、不思議な現象の意味が、よく理解できなかったのです。
そして、映画の中では、瀧が企てた防災無線乗っ取り作戦だけでは町民全員を避難させることは無理だと判断した勅使河原(テッシー)が三葉に、町長で父である俊樹に説得に行くように言うシーンはありますが、三葉が俊樹に直談判するシーンは省かれていました。

結果的に町民が全員避難していた事実が描かれることで、俊樹が三葉の説得に応じた事は判りますが、「なぜ」俊樹が三葉の言うとおりに町民を避難させる行動をしたのかが、映画では全く触れられていませんでした。

そういった疑問が、この加納新太版「君の名は。AnoterSide~」で払拭できるようなストーリーが描かれていました。

特に第4話(短編4話からなる)は、メインストーリーに入れておいたほうが良かったんじゃないか・・、映画でも描かれたほうが、より映画に深みが出たのでは・・と個人的に思いました。

しかし、少し気になった事も・・全体的にちょっと文体がくどいかな・・・とも思いました。
それは、全体のストーリーが別にあり、設定をより深く掘り下げるのが趣旨の本なので仕方がないことかもしれませんが・・・
3章までの話は、メインストーリーのあくまで裏話的なこと・・瀧と三葉が入れ替わっていたときに、映画とは異なる登場人物からの視点(勅使河原や四葉の心理描写)が必要以上に細かく書かれているので、ちょっと小説として読むには冗長な部分が多いな・・と感じてしまいました。

とはいっても、4話の最後の最後のストーリーがとても秀逸なので、映画を観た人は「小説 君の名は。」よりも、こちらの「君の名は another side:earthbound」を読むのをおすすめいたします。
<h3>小説 君の名は。と「君の名は。another side :earty bound」を読んでのまとめ</h3>
「小説 君の名は。」新海誠著は、小説としては文体が物足りないけど、映画を観た後で、頭の中に映像がある状態で読むと、映画の余韻に浸ることができる。映画の感動をそのまま本で楽しみたい方はこの本。

一方「君の名は。another Side:earth bound」加納新太著は、スピンオフ小説で、メインストーリーは描かれておらず、勅使河原(テッシー)、四葉、俊樹の心理描写が細かく描かれている。(映画をより深くしるには、こちらの本を読むのをおすすめ)

小説版では、小説としては文章が端折りすぎて、読み物としては少し物足りなく感じ、逆に加納新太著のスピンオフ版は、登場人物の心理描写がメインなので、少し文体がくどくなっている・・・。

というわけで、結局は一番完成度が一番高いのは、映画版「君の名は。」という至極当たり前の結論になってしまうのでした。

しかし、私としては 映画版にanothe side版の4章の話を描いていれば、より映画版に深みが出て良かったんじゃないかな・・と思ったりするのですが、色々盛り込みすぎると、瀧と三葉の恋愛青春の感情表現が薄れてしまったかもしれないので、これはもう色々端折るのは仕方なかったんだなーと勝手に想像した次第です。
(もしくは、加納新太さんの小説は、映画が製作途中に書かれたのかもしれません)

色々書きましたが、とても楽しい映画、小説だったのは間違いありません。ご参考にしていただければ幸いです