「6才のボクが、大人になるまで。」至上の共感型映画。12年かけて撮影。公開出来た事が奇跡

カルト的な人気を誇る[ビフォア・サンライズ」「ビフォア・サンセット」「ビフォア・ミッドナイト」三部作のリチャード・リンクレイター監督が12年間もかけて撮影した異色の作品。6歳の主人公が18歳になるまでの成長奇跡を、主人公だけではなく、姉、父、母役の4人も同じ役者が12年かけて演じている。もちろんスタッフも同じ。一人でも病気になったり、交通事故にあったりしても、完成することはなかったであろう、まさに公開までこぎ着けたのが奇跡的です。さらに撮影方法だけが特殊な映画ではなくて、きっちりと主人公の成長を描けている。 公開当時から、大きな話題を呼び批評家達も絶賛。多くの賞を獲得しました。 アカデミー賞6部門ノミネート(助演女優賞はオスカー獲得)

当時のアメリカ大統領・オバマも、その年の最も印象深かった映画に、この映画を挙げていました。 唯一の弱点は、166分(2時間46分)と、ほぼ3時間弱の長さ・・・・僕は映画館で観たので、全然気にならなかったけど、DVDで観たらちょっとだれるかも・・しれません。でも絶対観るべきですね

6才のボクが、大人になるまで。の基本情報・感想レビュー

監督: リチャード・リンクレイター 公開年: 2014 年 映画時間: 166 分

出演: パトリシア・アークエット、イーサン・ホーク
原題: Boyhood

6才のボクが、大人になるまで。の評価・採点
かに助おすすめ度 4.5
気軽に観れるか 4.5
2回目観たい度 4.5
管理人の映画感想はこちら

6才のボクが、大人になるまで。のあらすじ(ネタバレ無し)

主人公のメイソンJrは6歳。両親が離婚して、姉サマンサとともに母親オリヴィア(パトリシア・アークエット)の故郷に引っ越しする。離婚した父(イーサンホーク)は、いい歳こいてバンド活動している甲斐性なしの中年。

母親のオリヴィアは職を得るため大学で心理学を学ぶが、そこで教授のウェルブロック恋に落ち再婚。教授の二人の連れ子と共に計6人家族になるが、家では酒を飲み、暴力を振るう事がわかり、子供二人と家を飛び出す。

メイソンJrは、思春期を迎え、反抗期や失恋を経験。6歳から18歳までの心の成長を描きます。
12年間かけて撮影した役者達の12年の歳月が、映画自体の何気ない日常のストーリーにも説得力を与えており、普通の映画では考えられない楽しみ方ができる映画となっていました。

映画「6才のボクが、大人になるまで。」の評価(管理人の感想)

このリチャード・リンクレイター監督は、かなり前衛的な映画を撮る人ですね~。

俳優のイーサンホークと組むことが多いです。

1995年「ビフォア・サンライズ(邦題 恋人達の距離)」
2004年「ビフォア・サンセット」、2013年「ビフォア・ミッドナイト」の3部作では、イーサン・ホークとジュリー・デルピーのほぼ2人だけの会話ばかりの映画を、9年ごとに公開して、大きな話題になりました。

私もこの3部作は、大好きな作品です。

卒業旅行での出会い(20歳前後)を描いた1作目から、9年後、18年後と同じ役柄のまま、9年後18年後のストーリーにすることで恋愛~結婚~そして子育てという男女間の関係の変化を、とてもリアルに表現していました。

しかーし、実はこの3部作の裏側で、もっとすごいプロジェクトが進んでいたなんて・・・。

それがこの映画「6才のボクが、大人になるまで。」です。6歳の子が18歳に成人するまでの青春物語を、本人だけではなく、父や母役、姉役もすべて同じ役者が12年間かけて撮影されているなんて・・・

わかりやすく言うと、普通は18歳が主役だと幼少期役の子役が一人、中学生時期の青年期に子役一人と最低2人の別の子役が出てくるのが当たり前なのですが、18歳の主役の子役時代を、本当に12年かけて本人だけで演じきっているんです。

しかも本人だけではなく、姉役、母親役、父親役の3人も12年間通して同じ役者が演じている。

主人公は6歳のかわいい男の子だったのが、目に見えて成長していき、最後には180cmくらいの大人になる急激な成長をみれますし、母親役のパトリシア・アークエットなんかは、太ったり痩せたり、体重の増減を繰り返して綺麗な女性から、中年女性へのリアルな変化をみせてくれます。

この成長をリアルに映画の中で感じるってのは、すごい説得力を持つことなんだなーと思いましたね。

もう一つ特徴的なのは、映画の中で何年後~とか2008年とか、年月がわかる具体的な表記は映画中に一切出てきません。
だから、成長度合いを自分で気づく事でしか観客は年月を感じることができないので、観客は主人公の成長度合いを非常に注意深く観るようになります。

主人公が話していて、違う場所のシーンになったら、いきなり成長してたりする訳です。
小さい時には、成長度合いは少ないのですが、青年期になると、場面が変わると身長が明らかに伸びてたり・・と、成長するにつれて成長度合いも大きくなっていくのすが・・・

もう青年になるころには、この前まで6歳だったのに、こんなに大きくなって~と、親戚のおじさんのようなスタンスから映画を観ることになってしまいます。

撮影手法ばかりが話題になる映画ですが、脚本や編集もとても巧みにされていると思います。

監督のインタビューなどを読みますと、毎年夏頃に一ヶ月ほどスタッフと役者で集まり、その都度、主役の成長度合いをみて、脚本をその場で考えて、撮影したそうです。

でも、人間12年間も経てば、いろいろ考えも変わったりするでしょうに。。よくぞ1人も脱落することもなく、最後まで撮りきったな・・と関心しました。

あともう1点、映画解説者の町山さんが言っていたのですが、子役で成功して有名になると、性格が悪くなったり、薬にはしったり、ロクな大人にならないという法則は、世界共通のトピックなのですが、

この映画に関しては、グレル要素がない。なぜなら、映画が公開される頃には成人しているから・・というのが面白かったです。

メイソンJr役のエラー・コルトレーン君は、オーディションで選ばれたそうです。そして、姉のサマンサ役のローレライ・リンクレイターは、監督の実の娘だそうです。撮影期間が長い中で、途中で辞められたりしないように・・これは当然の配役かもですね。

なんだかんだで、結局撮影手法にばかり私もフォーカスしてしまいましたが、この映画を観ての感想は、至上の共感型映画だな~と思いました。
誰もに青春時代がありますが、幼少期の出来事なんか普段思い出せません。
それを、この主役の男の子の成長を追体験することで、自分の幼少期・青年期の出来事と感情を自然と思い出します。

親が離婚して・・とかの家族の設定自体は、当てはまらない人も多いのですが、苦境からの脱出、独立心の芽生え・・という風に捉えれば、誰もが共感する出来事ばかり。

小さい頃からのリアルの成長を見せることで、主人公への愛着が湧き、自然と自分の人生をも振り返ってしまう。。
そんな不思議な共感を得ることが出来る映画だな~と思いましたね。

特に主人公が男の子なので、観る側のあるあるも男が観たほうが多いかもしれません。

この映画は、絶対に映画館で観なければ!と意気込んで見に行きましたが大正解でした。期待通り。
ぜひ未見の方は「絶対観るべき映画」です