恋のゆくえ・ファビュラスベイカーボーイズ~ジェフブリッジスが実際の兄弟でピアノ・デュオを演じる脚本が秀逸

ホテルでのピアノ演奏で生計をたてている兄弟で組むジャズピアニストのデュオ。演じているのも、実際の兄弟であるボー・ブリッジスとジェフ・ブリッジスの二人。この二人の父と母も俳優と女優なので、俳優一家なんですね。 実際の弟でもあるジェフ・ブリッジスのほうが売れっ子で、評価も高く有名ですが、兄のボー・ブリッジスはテレビ映画に多く出演していて、本国アメリカでは知名度はあるそうです。(日本に公開されるような映画にはあまり出演していません) なんといっても、実際の兄弟が、映画でも兄弟を演じているというのが見所です。 この実際の兄弟の性格は知りませんが、社交的な兄と仏頂面の弟を見事に演じています。 そして、主演のミシェル・ファイファーは映画初主演にして、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされます。 なんといっても、吹き替えなしで歌うファイファーの歌声は、ハスキーで雰囲気たっぷりです。なんと、この映画のサントラCDは1989年のグラミー賞(米国で一番の音楽賞)で2部門を受賞するという高評価を受けました。 全体的に大人な雰囲気の映画で、派手なストーリーではありません。しかし脚本がとっても秀逸で良い余韻の映画です。 恋人と二人で観る・・よりも夫婦でじっくりワインなんか片手に観ると楽しめる映画だと思います。ただし、注意すべきは、邦題で「恋のゆくえ」とあるので、恋愛映画か・・と思ってみると全く違うテイストなので注意が必要。あくまで中心は兄弟の関係性のほうです。

恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズの基本情報・感想レビュー

監督: スティーブ・クローブス 公開年: 1989 年 映画時間: 109 分

出演: ジェフ・ブリッジス、ミシェル・ファイファー、ボー・ブリッジス
原題: The Fabulous Baker Boys

恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズの評価・採点
かに助おすすめ度 4.0
気軽に観れるか 3.5
2回目観たい度 4.0
管理人の映画感想はこちら

恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズのあらすじ(ネタバレ無し)

兄弟でジャズ・ピアノのデュオを組み、ホテルなどで演奏していて生活しているフランクとジャックのベイカー兄弟。しかし景気は悪く契約を打ち切られたり、ホテルの客層は悪くなるばかりで、先行きは不安。

そこで、兄弟は、起死回生を狙って、女性ヴォーカルを募集してみる。そして応募者の中から魅力的な歌声の女性スージー・ダイヤモンド(ミシェル・ファイファー)を見つける。
ホステスをしていて、歌のプロでもない女性。そして素行は悪い。しかし試しにホテルの演奏で歌わせてみると、今までにない華やかな舞台になり、本格的なメンバーとして採用する。

たちまち華やかになったバンドは評判になり、今まで演奏したこともないような格上のホテルからも呼ばれるようになり、スージー・ダイヤモンドのバンド内での発言力も強くなる。今までマネージメントを仕切っていた、兄のフランクに対しても文句を言い始める。

しかし弟のジャックだけは、スージー・ダイヤモンドに惹かれている様子。

そして、寡黙で天才肌である弟のジャックは、奔放なスージーの発言にどこか影響されたのか、今ままで知らず知らずの間に抑え込んでいた自分の内面に向き合っていき・・・長年コンビを組んできたフランクとジャックの兄弟関係も変わっていく・・

映画「恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」の評価(管理人の感想)

ジェフ・ブリッジスとボー・ブリッジスの実際の兄弟共演と、ミシェル・ファイファーの体当たりの歌声を堪能できる映画というのがこの映画の宣伝文句。

確かに、この俳優陣達の演技も良いんだけれど、僕がこの映画で一番の感銘を受けたのはオリジナルの脚本でした。

地味なストーリーだけど、とっても鑑賞後も余韻に浸れるような深みのあるストーリー。そして演出も非常に自然です。

ジャックがホテルでドサ回りしている時、演奏中もずっとタバコを吸いながら演奏しているのですが、ストーリーの最後では、そのタバコがポイントとなる場面があります。(詳しくはいいません。)

この映画は、邦題で「恋のゆくえ」と付けられたので、恋愛映画・・のように先入観を持って観ると、期待外れになる可能性があるので注意が必要です。

この映画を、本当にわかりやすくとらえると、ジャックの自分探し・内面と向き合う姿を描く映画になります。

兄と弟というある種、腐れ縁の関係であるフランクとジャックの2人。ジャックはピアノの素質は、フランクよりも上だけど、人付き合いが苦手でマネージメントは兄のフランクに任せている

兄のフランクは、営業先にも媚びを売ったり、客受けが良い大衆的な曲を選んで演奏しているが、それは家族と弟を養う為とう自負を持っており、その兄の努力もジャックは痛いほど分かっている。

けれども、スージー・ダイヤモンド(ミシェル・ファイファー)という、自由奔放な考えを持つ女性ヴォーカルが、兄弟の中に入ってくることで、化学変化のように元々の兄弟の関係も少しずつ変化していく。

そして最後には、女性ヴォーカルは抜けるのですが、一旦 価値観が変わってしまったジャックは元の兄弟関係には戻れなくなってしまいます。

ジャックは寡黙でほとんど途中まで話さないのですが、スージー・ダイヤモンドに対して怒りをぶちまけるシーンがあります。

「俺たちは何年も兄弟だけでピアノ演奏だけで食べてきたんだ。おまえ(スージー)がいなくなっても元に戻るだけだ。仕事を取ってくる兄には本当に感謝している・・・」

この言葉はジャックが普段、自分が本当にしたい音楽活動の気持ち抑え込む為に、自分に言い聞かせていた言葉なんだと思います。それだけに、なぜか痛々しく聞こえます。

結局、ジャックはスージーへの言葉とは裏腹に、自分の内面と向き合い、自分の心に従う決断をします。

大人になって、会社で働くようになると、好きな分野を仕事にしていても嫌いになってくることがあると思います。よく好きなことは仕事にするな。趣味は趣味で残しておけ・・なんて言葉も聞いたことがありますよね?

ジャックの悩み・・は、社会人であれば誰でも1度は悩んだ経験があるような事。

結局は自分に素直になって、一歩前に進んでみる勇気が大切ということを、この映画から学びました。

文章で書くと、非常に陳腐でよくありそうな内容ですが、兄弟関係を題材にして自然に最後まで見せる脚本は本当にすごい!

脚本は、監督であるスティーブ・クローブス自らが書いており、なんとこの映画は29才の時に初監督。才能ありますよねー。

気になって調べてみたら、この映画の後は、ほとんど脚本家として活躍している・・・しかもハリー・ポッターの全シリーズの脚本を担当している方でした。

こんな大人な渋い脚本書いた方が、ハリー・ポッターの脚本書いていたなんてビックリしましたが・・才能あるのは間違いありません!。

地味ですが、かなりおすすめです